ドキュメンタリー映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』 佐々木芽生監督が母校へ凱旋

おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー

「捕鯨」を巡って対立する、世界と日本。ドキュメンタリー映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』は、多様な視点からそれぞれの“正義”を写実します。

監督・プロデュースを務めた、札幌南高校出身でNY在住の佐々木芽生さんに、図書局員を中心に後輩たちがインタビューしました。

おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー
後輩たちが佐々木監督のためにウェルカムボードを描きました。クジラがリアル!

『おクジラさま ふたつの正義の物語』

佐々木芽生監督

▶映画制作のきっかけは?

アメリカで『ザ・コーヴ』という映画を観て衝撃を受けたんです。捕鯨国・日本に対する理解がまったくなく、偏見に満ちている。日本人と自然や動物との関係性を理解しようとせず、捕鯨の町・和歌山県太地町の人たちのことを、隠れて悪いことをしていると一方的に悪者扱いしているんです。でも日本側からの反論の声は海外には聞こえてこない。捕鯨に関してはいつも日本が悪いという報道しかなくて、その原因は情報の欠如にあるんじゃないかと思いました。このままいけば偏見だけが広がっていくし、ますます対立が進んでいく。それでこの映画を撮ろうと思ったんです。

おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー

▶このタイトルにした理由は?

徳川五代将軍・綱吉が制定した「生類哀れみの令」。私が知る限りでは、人類で初めて動物を人間と同じかそれ以上に大切にしようとした法律なんです。皆さんが勉強したように「お犬さま」と揶揄する言葉もありましたが、本当にクジラを大切にしたいと思っている海外の活動団体・シーシェパードの人たちの想い、そしてクジラのお陰でここまで生き長らえることができた太地町の人たちのクジラに対する感謝の想い。その両方の世界観を象徴して『おクジラさま』と名付けました。

▶中立的な立場で取材されているのが印象的でした。

日本の見方や考え方を発信しようというのが最初の動機ではありましたが、取材を進めていくうちに情報発信の不足や国際社会に対してアカウンタビリティー(説明責任)を果たしていないなど、日本側の悪い点も見えてきたんです。「捕鯨は日本の伝統」と言うけれど、伝統に関する考え方も日本と海外では違っていて、欧米では時代に合わない古い伝統、例えば奴隷制度のようなものは壊して進歩していこうという考え方なんです。それをいくら「伝統」だからと正当化したところで世界は納得しないですよね。

おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー
おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー
 
▶多角的な物の見方を身に付けるには?

最近は日本でも「多様性(ダイバーシティ)」という議論がありますが、人間は一人ひとり考え方が違うっていうのは当たり前のことなんです。逆にみんなが同じ考えや感じ方を持っているとしたら、不気味で何かがおかしいと思わないといけない。違って当たり前ということからスタートして、違う意見を持つ人を排除するんではなくて、自分と意見が合わず嫌いな人だとしても「共生」すること、多様な考え方や価値観を認めること。それがこの世の中を豊かにするんだということを覚えておいてほしいです。
 

映画では描き切れなかった
“もうひとつ”の『おクジラさま』
おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー
おクジラさま ふたつの正義の物語
佐々木芽生/集英社

おクジラさま ふたつの正義の物語

  • 監督・プロデューサー:佐々木芽生「ハーブ&ドロシー」
  • 配給:エレファントハウス

STORY 紀伊半島南端に近い、和歌山県太地町。追い込み漁を糾弾した映画『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、この小さな漁師町は世界的論争に巻き込まれた。「くじらの町」として400年の歴史を持つ「誇り」は、シーシェパードを中心とした世界中の活動家たちから集中非難の的となる。ヒートアップする対立が沸点に達しようという2010年秋、佐々木は太地町を訪れる…。

全国順次公開

OFFICIAL WEBSITE

©「おクジラさま」プロジェクトチーム

取材を終えて

ひかぺ
高3
この作品を観るまで、日本人が捕鯨を伝統として受け継いでいることも、海外から批判されていることも知りませんでした。この作品をきっかけに捕鯨に興味を持ち、いろいろな意見に耳を傾けることの重要性を学びました。

ch FILESでは、取材に参加してくれる高校生=「chスタッフ」を募集しています。

高校生活をもっと有意義に!U-18フリーマガジン「ch FILES」のスタッフ募集中

2016.02.26
おクジラさま ふたつの正義の物語,佐々木芽生監督,南高校,インタビュー