大人になると“見え方”が変わる 映画『永い言い訳』 西川美和監督に高校生インタビュー

永い言い訳 西川美和監督

ひとを愛することの「素晴らしさと歯がゆさ」を描ききった、大人の映画『永い言い訳』。

一貫してオリジナルストーリーに挑み続ける西川美和監督に、ch高校生スタッフがインタビューしました。

映画『永い言い訳』

西川美和監督

苦しい後悔を胸に抱えながら
人生を取り戻していく物語

 
……心の中の綺麗ではない部分を、綺麗な映像で描いているということがすごく印象的で、今はまだ難しくて大人にならなければ分からない心境がたくさんあると感じました。この物語はどのように生まれたのでしょうか?

2011年の東日本大震災で、地震が起こるその日の朝に喧嘩別れになってしまったご夫婦がいたことを、ドキュメンタリー番組を見て知ったんです。その時に、同じように「あんなこと言うんじゃなかった」という別れ方をして、後悔に苦しんでいる方はたくさんいるんじゃないかと想像して。災害に限らず、そういった別れ方は誰にでも起こりうるし、いつどういう形で自分の身に降りかかってくるかも分からない。そんな誰かに話して褒められるような別れ方ができなかった時に、1人で苦しい後悔を胸に抱えながら、そこからもう一度、自分の人生を取り戻していく人の姿を描きたかったんです。

……本木雅弘さん演じる幸夫さんや、亡くなった奥さんの親友の大宮家の人々など、どのキャラクターも本当にそこに生きている人のようでした。

本木さんは、パリッとして格好良くて欠点のない人に見えて、意外とくよくよと悩んだり、自分に自信がなかったりする方らしくて、私が小説に書いた主人公の幸夫に似ていると先輩の是枝監督から教えていただいたんです。俳優さんには、役に性格が似ていなくても全く違う人格なれる人もいれば、自分の内面と役が近い方が演じやすい人もいて。今回、自分の中の弱いところや内側の恥をさらす幸夫という役は、あえて同じ性質を持っている方に、役と一緒に苦しんで欲しいと思ったんです。

……子供たちも演技なのか普通に過ごしているのか分からないくらい自然体で…不思議な感覚になりました!

大宮家の2人の子供には、ほとんどお芝居の経験のない子を選んだので、特に妹の灯ちゃんはカメラをじっと見つめてしまったり、マイクを引っ張ってしまったり最初は撮影にならなかったけど…自然にその役の気持ちになってくれて、たまに飛び出すアドリブがことごとく物語の設定に合っていたり! ごく普通の子供だからこそ、リアリティが出たのかなと思っています。

永い言い訳

永い言い訳
 

悲しい時に泣けない
複雑だからこそ人は面白い

 

……幸夫さんはダメな大人だけれど、まだ幼くて繊細な大宮家の真平くんにとって、すごく大切な人のように感じました。

高校生の皆さんも経験があると思うのだけれど、親子だからこそ強情を張ってうまくいかないコミュニケーションというものがあると思うんです。それに、人は悲しい時に泣けるとか、怒った時に大きな声が出せるとか、みんなそんなにシンプルではなくてもっと複雑。複雑だからこそ人は面白いと思うのだけれど…そんな繊細な真平の気持ちを理解してくれる人は、お母さんを失った大宮家には残されていなくて、行き場を失っていたところに、同じ複雑な性格をした幸夫が風穴を開けてくれるんです。悪人が登場する小説の中に、読者は自分が心に持っている似たような葛藤や汚さを見つけて、「自分だけじゃないんだ」と救われることがあるように、真平にとって幸夫はそんな存在なんです。

……高校生にメッセージをお願いします!

高校生時代に観て感動した作品が、10年20年経ってもう一度観てみると見え方が変わったりするので、この作品を子供たちの視点で今観ているなら、10年後には多分違う人物の視点で観ることになると思います。登場人物の誰に感情移入したのか、お友だちや家族の方と話し合ってもらえたら嬉しいです。それと、中高生の時期というのはものすごく背伸びをすることが大事だと私は思うので、高校生の皆さんには、「自分にはまだできないかも」と思うことに勇気を出して挑戦して欲しいです。

 

ch STAFF
東海
かな 高3
自分が成長したときにこの作品がどんな見え方をするのかがとても楽しみになりました。
ch STAFF
東海
ゆり 高1
西川監督が私たちの質問をとても面白がってくださって嬉しかったです!

 

永い言い訳

人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子どもたちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。保育園に通う灯(あかり)と、妹の世話にため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。子どもを持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝きだすのだが…。

  • 原作・脚本・監督:西川美和
  • 原作:『永い言い訳』西川美和(文藝春秋刊)
  • 出演:本木雅弘 竹原ピストル 藤田健心 白鳥玉季 堀内敬子・池松壮亮 黒木華 山田真歩・深津絵里
  • 挿入歌:手嶌葵『オンブラ・マイ・フ』
10.14(金)全国公開

映画オフィシャルサイト

©2016「永い言い訳」製作委員会

 
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永い言い訳 西川美和監督